この方法は昔から広く用いられており、アメリカのEPAにも正式に認められている分解方法です。大気圧開放状態でサンプルに各種の酸やアルカリを混合し、加温して分解します。一般的に、分解に要する時間は数時間から数日必要とします。
この方法では、使用した酸による分子イオンの影響を受けたり、分解中に揮発性の高い元素が失われることがあります。更に大気からの汚染を受けたり、大気中に蒸発した酸が環境あるいは人体に影響を与えることがあります。したがって、ICP-MSICP-QQQのサンプル分解方法としてはあまりお勧めできません。
密閉系の容器内でサンプルは高温高圧の酸で分解されます。圧力が高いために酸の温度は大気圧下で行った場合より高くなり、分解は促進されます。したがって、分解に要する時間は数時間と短い上に、大気からの汚染もなく揮発性の高い元素の損失もないので、オープンベッセル分解よりも優れた方法といえます。ステンレス製のジャケットにPTFE製の内容器が一般的に用いられます。加熱しすぎると容器が爆発する可能性があるので注意が必要です。
もっとも効果的な分解方法として近年注目を集めています。基本的にはクローズドベッセル分解と同じですが、加熱方法にマイクロ波を用いる点と金属製のジャケットを使用できない点が違います。マイクロ波はPTFE製の容器には吸収されませんがサンプルおよび酸を構成している分子の双極子とイオンに吸収されてサンプルおよび酸の温度を上昇させます。処理中はサンプルの温度・圧力をモニタできる機構を備えている装置もあります。また、破裂板があり容器が破裂する前に圧力を逃がすように設計されているので安全です。