定量の場合、測定質量数の選択は、分子イオンによる干渉や同重体がなく、しかも同位体存在比が大きい質量数を選択します。
積分時間を長く設定すると、一般的に精度は良くなりますが、測定時間が長くなるので、妥協点を見つける必要があります。「検出限界」をご覧ください。
半定量分析は未知サンプルの概算濃度を得るための方法です。MassHunter Workstationにはあらかじめ各元素の感度係数が登録されていますが、装置の感度やチューニング条件により変化するので、毎回感度係数の補正を行うことお勧めします。通常は 10 ppbのチューニング溶液を用いて感度係数の補正を行います。
半定量を実行すると、以下の手順で同位体比や分子イオンによる干渉をチェックした後で結果が出力されます。
チェックAですべて 1%以上、チェックBですべて 0.1%以上の場合、濃度が計算され、出力されます。チェックAで 1%以下、チェックBで 0.1%以下のものがある場合、濃度が計算され、定量結果出力パラメータをONにした場合のみ、干渉の可能性の表示と共に出力されます。
定量結果出力パラメータにおいて出力方法を判断します。ONの場合、結果はすべて出力されます。OFFの場合には出力されません。AUTOを選択した場合には干渉の影響を受けている可能性がある元素は出力されません。
半定量で使用する質量数は [半定量パラメータ編集] の中で変更することができますが、感度係数はそれに伴って自動的に変更されないので、同位体存在比に応じて感度係数を入力しなおします。
半定量では 1 マスの中で最大の信号だけが代表として用いられます。したがって、半定量レポート中のカウントと [スペクトル] の [カウント値一覧(元素毎)] の結果は異なります。
定量結果が正しいかどうかを確認するには次の方法があります。
未知サンプルと、そのサンプルに既知濃度を添加したサンプルを定量分析します。両者の濃度差と実際に添加した濃度から回収率を求めます。100%が理想値ですが、添加した濃度がサンプル中の濃度に比べて少なすぎる場合には、回収率が悪くなることが考えられるので注意が必要です。
サンプルを希釈して分析します。希釈倍率を考慮した定量結果と希釈前の結果と比較します。5~10 倍希釈するのが一般的です。
標準サンプルは世界各国で存在します。最も一般的な標準サンプルはアメリカのNIST(National Institute of Standard Technology)です。これらの標準サンプルは種々の分析手法でクロスチェックされた保証値を持っています。標準サンプルによる分析はサンプル前処理を含んだ分析の信頼性をチェックできます。
US EPAのMethod 6020 (CLP-M) はこれらすべての方法を使用しています。
ブランク減算は得られたサンプルの定量結果からブランクの定量結果を差し引きする機能を持ちます。したがって、定量分析あるいは半定量分析で濃度の減算を行うのに用いられます。
バックグランド減算はスペクトルの差し引きを行うもので、定性スペクトルの解析に用います。
繰り返し分析を行ったデータにバックグランド減算を適用すると、個別のデータがバックグランドの平均値で減算されます。したがって、同じデータでバックグランド減算をしても 0 にはならないことがあります。